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仙台高等裁判所 昭和24年(ナ)7号 判決

原告 佐藤房太郎

被告 宮城県選挙管理委員会

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告訴訟代理人は、「昭和二十四年五月二日行われた宮城県栗原郡築館町議会解散の賛否投票の無効なことを確認する、被告が右賛否投票の効力に関し原告のした訴願に対し昭和二十四年七月四日した裁決を取消す、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求めた。

三、事  実

参加人熊谷英雄、佐藤昇平、伊藤清雄、白鳥連助、訴外白鳥馨、高橋理喜三、鈴木茂男の七名は、宮城県栗原郡築館町議会の解散請求代表者として同町議会解散請求者署名簿に同町における選挙権を有する者の署名捺印を求め、有権者総数三千六百七十八名中法定数三分の一以上に当る千六百四名(ただしこのうち選挙人名簿に記載されている者の署名にあたるものとされた分は千五百三十八名である)の連署を得たとして昭和二十四年三月二十二日これを同町選挙管理委員会に提出して同町議会解散の請求をし、同町選挙管理委員会は右町議会解散請求を有効なものとして同年五月二日同町議会解散の賛否投票を行つた結果、投票総数二千九百二十四票中賛成投票千四百六十六票、反対投票千二百七十八票、無効投票百八十票と公表した。同町の有権者である原告は昭和二十四年五月六日同町選挙管理委員会に対し右投票が無効であることを主張して投票の効力に関する異議の申立をし同月七日右申立を却下されたので、更に被告に訴願したが同年七月四日訴願却下の裁決があり該裁決書は同月六日原告に送付された。

しかし右町議会解散の請求は左の理由により無効であつて従つて本件賛否投票は無効である。

一、本件町議会解散請求者名簿は次のように適法な方式を欠きまたその署名者の数は法定数に達しないものであるから、これに基く本件解散請求は無効である。

(一)、町議会解散請求者署名簿は有権者の連署を要するものであるが、その趣旨は一冊の解散請求者署名簿を作成しその各紙葉間に連続を証するための契印を押すことを要し、又署名は自署でかつ連続しているものでなければならない。しかるに本件解散請求者署名簿は最初二十二冊に分冊して作成し各冊に有権者の署名を求めた上、後にこれを一括して一冊の署名簿(甲第一号証)として編てつしたものであつて、各紙葉間に契印をも欠いている。またその署名中別紙目録第一欄記載の分は、一ないし三八六の各組毎に同一筆蹟であることが明らかでいずれも自署でなく、仮にその各組中各一名がそれぞれ他の署名を代筆したものであるとしてもその各組中の一名を除いた以外の分は自署でないことはいうまでもない。従つてその自署でない分を除くと本件解散請求者署名簿に署名した者で選挙人名簿に記載されている者の数は法定数である有権者総数の三分の一以上に達しないものである。また本件解散請求者署名簿の署名には通し番号の記載がなく署名の連続を欠いている。

(二)、解散請求者署名簿には解散請求書またはその写および解散請求代表者証明書またはその写を添え、該署名簿に有権者の署名捺印を求めなければならない。しかるに本件解散請求者署名簿は最初二十二冊に分冊されその各冊に有権者の署名を求めたものであるが、該各冊の署名簿にはいずれも解散請求書またはその写および解散請求代表者証明書またはその写を添付しなかつたばかりでなく、後に右各册を一括して編てつした本件署名簿(甲第一号証)には解散請求代表者証明書またはその写の添付がないものである。

(三)、選挙管理委員会は、解散請求者署名簿に署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることを証明して照合簿と署名簿に契印を押さなければならない。しかるに本件解散請求者署名簿には一部分の外この契印が押してない。

二、本件照合簿と解散請求者署名簿の照合は次のように違法に行われたものであるからこれに基く本件解散請求は無効である。

(一)、照合簿と解散請求者署名簿の照合は選挙管理委員会において、該署名簿に署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることを確認するためのものであつて、その確認したことの証明は照合簿と署名簿に契印することによつてされなければならない。またその照合の際署名が自署であるかどうかをも調査しなければならない。しかるに本件照合簿と解散請求者署名簿の照合については前記のように大部分契印をもつて証明していない。また署名の自署であるかどうかを調査していない。

(二)、選挙管理委員会は委員三名以上が出席しなければ会議を開くことができない。もし委員の数がこれに達しないときは補充員を出席させなければならない。しかるに本件においては築館町選挙管理委員会委員長大場義則が出席しただけで委員の法定数を欠いているに拘らず前記の照合を行つたものである。

(三)、照合による契印が終つたときは、選挙管理委員会は、解散請求者署名簿に署名捺印した者の総数及びその者の中で選挙人名簿に記載された者の総数を計上し、これを署名簿の末尾に記載しなければならないのであるが、本件においては、前記委員長が他の委員にはかることなく又その意見をも徴せず単独でその数を決定し右の奧書をしたものであるから証明の効力を有しない。

三、町議会解散の請求があつた場合において、選挙管理委員会は、その請求が適法な方式を欠いているときは補正させなければならないのであるが、更に進んで賛否投票を行うべきか否かについても同委員会においてこれを決しなければならない。しかるに本件解散請求に基く賛否投票を行うべきか否かについて委員会が開かれていない。従つて本件賛否投票を行つたのは違法で該投票は無効である。

以上により原告は被告に対し昭和二十四年五月二日行われた宮城県栗原郡築館町議会解散の賛否投票の無効確認を求めると共に被告が右賛否投票の効力に関し原告のした訴願に対し昭和二十四年七月四日した裁決の取消を求めるため本訴提起に及んだ。証拠として、原告訴訟代理人は、甲第一ないし第六号証を提出し、証人大場英美、大庭長一郎、千葉正直、白鳥宣夫の各証言、検証および鑑定人小野胥の鑑定の結果ならびに原告本人尋問の結果を援用し、丙号各証の成立は不知と述べた。

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として次の通り述べた。

原告主張の熊谷英雄外六名が宮城県栗原郡築館町議会の解散請求代表者として同町議会解散請求者署名簿に同町における選挙権を有する者の署名捺印を求め、有権者総数三千六百七十八名中法定数三分の一以上に当る千六百四名(ただしこのうち築館町選挙管理委員会において選挙人名簿に記載されている者の署名と認めたものは千五百三十八名である)の連署を得たとして昭和二十四年三月二十二日これを同町選挙管理委員会に提出して同町議会解散の請求をし、同町選挙管理委員会が右解散請求を有効なものとして同年五月二日賛否投票を行つた結果原告主張の投票数を公表したこと、および同町の有権者である原告が右投票を無効としその主張の異議申立手続を経て昭和二十四年五月七日被告に訴願したが被告において同年七月四日訴願却下の裁決をし該裁決書は同月六日原告に送付されたことは、いずれも争わない。しかし本件町議会解散請求が無効で従つて本件賛否投票が無効であるという原告の主張は争う。即ち、

一、本件解請散求者署名簿は適法な方式を具備し且つその署名者の数は法定数に達しているものであるからこれに基く本件解散請求は有効である。

(一)、本件解散請求者署名簿は最初多数に分冊して作成され(但しその冊数は十八冊である)各冊に有権者の署名を求めた上、後に之を一括して一冊に編てつしたもの(甲第一号証)であることおよびその各紙葉間に連続を証するための契印を欠いていることは認めるしかし解散請求者名簿は一冊でなければならないものでなく、又右各冊を一括編てつしたのは築館町選挙管理委員会に提出の際その指示により一括編てつしたものであつて、これをもつて署名簿の適法な方式を欠いたものといわれない。その各紙葉間に契印することは要件でない。又本件解散請求者署名簿の署名中原告が自署でないと主張する別紙目録第一欄記載の署名はすべて自署であり従つて該署名簿に署名した者で選挙人名簿に記載されている者の数は法定数である有権者総数の三分の一以上に達しているばかりでなく、その署名は連続を欠いていない。

(二)、本件解散請求者署名簿は最初分冊されていたのであるが、その各冊についてそれぞれ解散請求書又はその写および解散請求代表者証明書又はその写を添付した上、有権者の署名捺印を求めたのである。仮に右各冊を一括編てつした本件解散請求者署名簿(甲第一号証)に解散請求代表者証明書又はその写の添付を欠いていたとしても、右書面の添付は署名簿に有権者の署名を求める場合の要件であつてその後において署名簿を管理委員会に提出する場合の要件ではないから違法でない。

(三)、照合簿と解散請求者署名簿の契印は選挙管理委員会において該署名簿に署名した者が選挙人名簿に記載されている者であるという確認行為を形式的に表明する手続に過ぎないから、同委員会において実質的にこれを確認したものである以上、署名簿に右契印がなく本件のように他の捺印方法を採つたものであつても署名簿の効力を左右するものではない。

二、本件照合簿と解散請求者署名簿の照合は適法に行われたものである。

(一)、照合簿と解散請求者署名簿の照合について契印による証明方法に不備の点があつても署名簿の効力を左右するものでないことは前記のとおりである。又照合は署名簿に署名した者が選挙人名簿に記載されている者であるかどうかを確認するもので、署名が自署であるかどうかを調査するものでない。仮に署名簿の署名が自署であるかどうかも調査しなければならないとしても築館町選挙管理委員会においてはこの点について慎重な調査をしている。

(二)、照合は選挙管理委員会委員長の権限に属する事務であるからこれについて委員会を招集する必要はない。仮にこれを委員会においてすべき行為であるとしても、本件においては昭和二十四年三月十九日および二十日の二回にわたり招集された委員会において法定数の委員、即ち委員長大場義則、委員大場英美、千葉正直が出席して照合を行つたものである。

(三)、解散請求者署名簿の末尾に、署名捺印した者の総数およびその者の中で選挙人名簿に記載された者の総数を記載することは、照合の結果に基いて単にその計数を記載するものに過ぎない。又これは委員長の権限に属する事務であるから委員会にはかることを要しない。

三、本件町議会解散請求は解散請求代表者から本件解散請求者署名簿を添え昭和二十四年三月二十二日築館町選挙管理委員会にされたので、委員長大場義則は委員会を開いてこれを受理し同年四月十二日該請求に基く賛否投票を同年五月二日に行う旨を告示したものであるから、本件賛否投票は有効に行われたものである。以上により本件賛否投票を無効としてその無効確認および本件裁決の取消を求める原告の本件請求は失当である。

証拠として、被告訴訟代理人は、検証および鑑定人小野胥の鑑定の結果を援用し甲第一号証が本件町議会解散請求者署名簿であることは認める、又同第二号証、第五、六号証の成立を認めるが同第三、四号証の成立は不知と述べ、同第一号証を援用した。

参加訴訟代理人は、本件町議会解散の請求が無効で従つて本件賛否投票が無効であるという原告の主張を争い、被告主張の前記一ないし三と同一の陳述をし、証拠として、丙第一ないし第四号証を提出し、証人鹿野為吉大場義則(第一、二回)、熊谷英雄、三浦新太郎の各証言、検証および鑑定人小野胥の鑑定の結果を援用し、甲第二号証、第五、六号証の成立を認めるが同第三、四号証の成立は不知と述べた。

四、理  由

原告主張の熊谷英雄外六名が宮城県栗原郡築館町議会の解散請求代表者として同町議会解散請求者署名簿に同町における選挙権を有する者の署名捺印を求め、有権者総数三千六百七十八名中、法定数三分の一以上に当る千六百四名の連署を得たとして昭和二十四年三月二十二日これを同町選挙管理委員会に提出して同町議会の解散請求をし、同町選挙管理委員会が右解散請求を有効なものとして同年五月二日賛否投票を行つた結果原告主張の投票数を公表したこと、および同町の有権者である原告が右投票を無効としてその主張の異議申立手続を経て昭和二十四年五月七日被告に訴願したが被告において同年七月四日右訴願を却下する旨裁決し該裁決書は同月六日原告に送付されたことは、いずれも被告の争わないところである。なお本件町議会解散請求者署名簿であることについて争のない甲第一号証によると、署名者総数千六百四名中築館町選挙管理委員会において選挙人名簿に記載されたものと認めたものは千五百三十八名であることが認められる。

原告は、本件町議会解散請求は無効であり従つて本件賛否投票は無効である旨主張するから以下順次審案する。

一、原告主張の本件解散請求者署名簿が適法な方式を具備していないかどうかおよび該署名簿に署名捺印した者で選挙人名簿に記載されている者の数が法定数である有権者総数の三分の一以上に達していないかどうかについて考えるに、

(一)、本件町議会解散請求者署名簿は最初分冊して作成され各冊に有権者の署名を求めた上、後にこれを一括して一冊の署名簿(甲第一号証)に編てつしたものであること、およびその各紙葉間に連続を証するための契印を欠いていることは、いずれも当事者間に争がない。(右分冊の冊数について原告は二十二冊と主張するがこれを認めるに足る証拠なくその十八冊であることは被告の認めるところである)。

しかし普通地方公共団体の議会の解散請求者署名簿の作成については、都道府県に関するものは市町村毎に、又地方自治法第百五十五条第二項の市に関するものは区毎に作成すべきものと規定されているが(地方自治法施行令第九十三条第百条)、その他の一般の市町村に関するものにあつても事情により必ずしも一冊に作成しなければならないものではないと解する。本件において築館町の選挙権を有する者の総数が本件解散請求の当時三千六百七十八名であることは当事者間に争のないところであるが、この程度の町の町議会解散請求の場合においてその請求者署名簿を二十冊前後に分冊作成することは必ずしも違法というに当らないと解するのが相当である。また署名簿の各紙葉を任意に加除することの許されないことはいうまでもないが、各紙葉間に連続を証するための契印を押さなければならないものではない。また署名簿の各冊について有権者の署名捺印を求めた後、その署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることの証明を求めるため選挙管理委員会に提出する場合においては、各冊の署名簿をそのまま提出すれば足るのであるが、本件においては、証人大場義則の証言(第一、二回)、証人千葉正直、白鳥宣夫の各証言の一部およびこれにより成立を認める丙第一、四号証を綜合すると、署名簿に署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることの証明を求めるため築館町選挙管理委員会に提出した当時委員長大場義則からてれを一括編てつするように注意を受けたので請求代表者においてこれを一括編てつし一冊の署名簿としたものであることがうかがわれる。証人大場英美、千葉正直、白鳥宣夫の各証言中右認定に反する部分は採用しがたく他に右認定を左右するに足る証拠はない。かような事情から考えると、本件署名簿の各冊につき照合のため選挙管理委員会に提出した当時においてこれを一括編てつしたことは署名簿の取扱上妥当を欠く非難を免れないとしても、この一事をもつてただちに違法なものということはできない。

次に解散請求者署名簿の署名は有権者の自署でなければならないことはいうまでもない。原告は本件解散請求者署名簿の署名中別紙目録第一編記載の分は、各組毎に同一筆蹟であることが明らかでいずれも自署でなく、仮にその各組中各一名がそれぞれ他の署名を代筆したものであるとしてもその各組中の一名を除いた以外の分は自署でないと主張するが、鑑定人小野胥の鑑定の結果によると右のうち同目録第二欄記載のものは同一筆蹟のものであることを認めることができる。証人三浦新太郎の証言中右認定とてい触する部分即ち右目録第一欄二八五組の佐々木初五郎、佐々木くまよの署名は同一人の筆蹟であるが佐々木四郎の署名はこれと異るものとする部分は措信し難く、他に右認定を左右し同目録第一欄記載の署名中第二欄記載の分以外になお同一筆蹟のものが存することを認めるに足る証拠はない。(但し、別紙目録第一欄記載五〇組中の柳沢きつよ、一四四組中の三塚善司、二五五組中の小野寺孝子、三七八組中の伊藤利一の分は上記鑑定の結果ではいずれとも明らかにされていないが、仮にこれを原告主張のように同一筆蹟のものとしても、以下説明のように本訴の帰すうに影響を及ぼすものではない。)そして右鑑定の結果と証人三浦新太郎の証言を綜合すると、右目録第一欄二八五組の三名の署名はいずれも三浦新太郎の代筆したものであることを認めるに難くないが、その余の同欄各組の署名中、同第二欄記載の同一筆蹟の分については、他に特別の事情の認められない限り、その一名が他の者の代筆をしたものと推認するのが相当であつて、これを一概にすべて第三者の代筆したものと臆断することはできない。従つて同目録第一欄記載の署名のうち代筆されたものと認められる分の署名者数は(前記第一欄記載五〇組中の柳沢きつよ、一四四組中の三塚善司、二五五組中の小野寺孝子、三七八組中の伊藤利一の分も自署でないものとして加算しても)同目録第三欄記載の通り合計二百四十五名になるのであつて、結局本件解散請求者署名簿に署名した者で選挙人名簿に記載されている者と認められたものについて自署として有効な署名者の数は第三欄記載の署名者数を控除してこれを計上したものでなければならない。本件解散請求当時の有権者総数は三千六百七十八名であるから、右請求が有効であるためには、その解散請求者署名簿に署名捺印した者で選挙人名簿に記載されている者の数が法定数三分の一以上である千二百二十六名以上でなければならないが、本件署名簿に署名捺印した者で選挙人名簿に記載されている者と認められた者の署名中、別紙目録第一欄記載以外の署名については原告においてその自署でないことを主張するものでないからこれを自署として計上し、同目録第一欄記載の分については前記のように第三欄記載の署名者数以外の分は自署としただ第三欄記載の署名者数を控除すべきものとするときは、結局本件署名簿に署名捺印した者で選挙人名簿に記載されている者の総数中自署として有効な署名者の数は優に千二百二十六名以上に達するものであること計数上明らかである。従つてこの点につき署名者の数が法定数に達しないとする原告の主張は採用することができない。

次に解散請求者署名簿の署名は連署であることを要するから、署名が連続していなければならない。本件署名簿は最初分冊の各冊に有権者の署名捺印を求め後に照合のため選挙管理委員会に提出した当時一括編てつされたものであることは前記の通りであるが、前掲甲第一号証、証人大場義則の証言(第一、二回)および検証の結果を綜合すると、分冊当時の署名簿には通し番号が一貫して記載されていない個所がないわけでなく又署名の行間が空白の部分又は前葉に空白を残したまま次葉に署名したものがないわけでないけれども、各冊につき全体として見るに連署の形式を具備していたものであることを認められないことはなく、又これらの各冊を一括編てつしたものについても各冊の末尾に当ると認められる部分が空白となつているけれども全体として署名の連続を欠いているものとはいわれない。要するに本件署名簿の署名は不備の点を免れないとしても連署の形式を具備しているものと認め得ないものではない。

(二)、前掲甲第一号証、丙第一、四号証、証人大場義則の証言(第一、二回)、証人千葉正直、白鳥宣夫の証言の一部を綜合すると、築館町選挙管理委員会委員長大場義則は昭和二十四年三月十一日本件町議会解散請求代表者の請求によりその代表者証明書を交付したことが認められるのであるが、右事実に同上証拠および証人大場英美、大庭長一郎の各証言を綜合すると、前記各冊の署名簿に有権者の署名捺印を求めるに際しては各冊の頭初にそれぞれ解散請求書又はその写および解散請求代表者証明書又はその写を添付したものであり、又前記照合を求めた当時右各冊の署名簿を一括編てつしたについては改めてその頭初に解散請求書および解散請求代表者証明書を添付したものであることをうかがうことができる。もつとも証人大場英美の証言の一部には右推認に反する部分がないでもないが、同証言の他の部分および証人大場義則の証言(第一、二回)と対照すると右のような推認を妨げるものではない。又前掲甲第一号証および検証の結果によると、右一括編てつされた署名簿には現在解散請求代表者証明書が添付されていないことが認められるが、前掲丙第一、四号、証人大場義則の証言(第一、二回)および証人白鳥宣夫の証言と対照して考えると、現在右のような状况が認められるからといつて前記署名簿が分冊されていた当時およびその後これが一括編てつされた当初においても署名簿に右解散請求代表者証明書又はその写が全然添えてなかつたと断ずるに足るものではない。本件署名簿が一括編てつされたのは前記のようにその署名者が選挙人名簿に記載されている者であることの証明を求めるため築館町選挙管理委員会に提出した当時であるが、仮に右一括編てつの際解散請求代表者証明書又はその写つ添付を欠いたものとしても、これを署名簿に添えなければならないものとする趣旨は要するに有権者が解散請求代表者の何者であるかを知り安んじて署名することを得させるために外ならないから、その署名を求める当時において署名簿に請求代表者証明書又はその写が添えられてあつたものである限り、そつ後においてこれを署名簿に添えることを欠くに至つた瑕疵は、その解散請求に基く賛否投票の結果に影響をおよぼすものということができないから、この事由によつて本件賛否投票の無効を主張し得るものではない。

(三)、選挙管理委員会は、解散請求代表者の請求により、解散請求者署名簿に署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることを確認したときは照合簿と署名簿に契印しその旨を証明しなければならない。しかし選挙管理委員会において右証明すべき事項を確認したものである限り、仮に契印の方式を履践せず照合簿と署名簿の各冊にそれぞれ捺印することによつてこれを証明しても、ただちに証明の効力がないものとは考えられない。前掲甲第一号証および検証の結果によると、本件解散請求者署名簿は大部分右契印の方式を履践せず単に捺印によつて証明したものであることが認められるが、証人大場義則の証言(第一、二回)、証人大場英美、千葉正直、白鳥宣夫の各証言を綜合すると、右は築館町選挙管理委員会において署名簿に署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることを確認したものであるが、委員長大場義則等において事務処理を急いだため契印の代りに照合簿と署名簿にそれぞれ捺印することによつてこれを証明したものであることが認められるからその証明は無効でない。従つて本件解散請求者署名簿に照合簿との契印の方式を欠くものがあつてもこれがために解散賛否投票の結果に影響をおよぼすものということができないからこの事由によつて本件賛否投票の無効を主張し得ない。

二、原告主張の照合行為が適法でないかどうかについて見るに、

(一)、照合簿と署名簿に契印の方式を履践せず単にその各簿冊に捺印したものであつても照合の結果の確認について証明の効力がないものでなく従つて契印の方式を欠いても解散賛否投票の結果に影響をおよぼすものでないことは前に説明した通りである。又右のように本件解散請求者署名簿に署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることを確認した以上その者の署名が自署であることも一応調査認定されたものと推認することができるのであつて証人大場美則の証言(第一、二回)と対照するときは未だその自署であるかどうかを全然調査しなかつたものと認めるに足る証拠はない。

(二)、証人大場義則の証言(第一、二回)、証人大場英美、千葉正直、白鳥宣夫の各証言を綜合すると、築館町選挙管理委員会は委員長大場義則、委員大庭長一郎、大場英美、千葉正直をもつて構成されていたのであるが、同委員会は築館町長尾形甚治の解散請求者署名簿についてと同時に本件町議会解散請求者署名簿について、これに署名捺印した者が選挙人名簿に記載されている者であることの確認を各請求代表者から求められたので、昭和二十四年三月十九日委員会を招集し同日および翌二十日にわたり委員会を開いて順次右の照合を行つたことがうかがわれる。もつとも同証拠によると、委員大庭長一郎は両日とも事実上照合手続に入る前に委員長に告げて退席し、委員長大場英美および千葉正直は両日とも委員長に告げて中座しその終始照合手続に従事したのは委員長大場義則と書記白鳥宣夫に過ぎないことが認められるのであるが、事実上事務の執行に当つた者が委員長その他一部の者であつたとしてもそれはなお委員会の行為でないとはいわれない。もちろん右退席又は中座した委員等において委員の職責を果す上に十分でなかつた非難を免れないとしても、原告主張のように委員会が委員の法定数を欠いて開かれた違法なものといわれないのであつて、他に古認定を左右するに足る証拠はない。

(三)、選挙管理委員会において、解散請求者署名簿に署名捺印した者の総数およびその者の中で選挙人名簿に記載された者の総数を計算しこれを署名簿の末尾に記載するのは、署名者および照合の結果選挙人名簿に記載あることを証明した者について、単にその総数を表示するものにすぎない。前掲甲第一号証および前認定事実を綜合すると、本件において築館町選挙管理委員長大場義則は委員会を代表してこれを記載したものであることをうかがい得ないことはないから、これを委員長が独断で決定しもしくは証明した無効なものということはできない。

三、証人大場義則の証言(第一、二回)および前認定事実を綜合すると本件解散賛否投票は、築館町選挙管理委員会において本件町議会解散請求に基いてこれを昭和二十四年五月二日に行うことを決定し同年四月十二日これを告示したものであることを認めるに足るのであつて、これを覆すに足る証拠はないからこの点に関する原告の主張もまた採用することができない。

以上説明の通りであるから、昭和二十四年五月二日行われた本件町議会の解散賛否投票は有効なものといわなければならない。よつて右賛否投票の無効なことを前提とし、その無効確認ならびに原告が右賛否投票の効力に関してした訴願に対し被告が昭和二十四年七月四日した訴願却下の裁決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものとして棄却を免れないものである。

よつて民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 村木達夫 猪狩真泰)

(目録省略)

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